フランスの中でもっとも充実していた3ツ星レストランのひとつであったトロワグロを育てたのは、
トロワグロ兄弟の父親、ジャン・バチスト・トロワグロであった。
彼は、ブルゴーニュで営んでいたカフェをたたみ、1930年にロワンヌ駅前のホテル・プラターヌを買い取り店を始めた。
ジャンが4歳、ピエールが2歳のとき、夫妻は子供たちが伸び伸び遊べる地として、この地を選んだのだった。
ジャン・バチスト、彼は料理人ではなかった。
妻が全ての料理を作っていた。
彼の仕事は、サーヴィスや
ワイン選びが中心であったが、一方鋭い味覚と料理感覚とを持った人でもあった。
いつも「料理とは素晴らしい自然の恵みである。地の糧を反映したハーモニーでなければならない」と語っていた。
料理に関して優れた直観力を持つ彼のアイディアは、後のトロワグロ兄弟の料理に多大な影響を与えている。
また、トロワグロでは客まで皿に盛り付けるゲリドンサーヴィスをしなかった。
料理は盛り付けに至るまでが料理人の責任者だというのが、彼の持論だからだ。
意味のない演出を避け、本当に意味のあるものだけを深く追求する事を教え、あくまで素材そのものの味を活かした的確な料理、それを目指した。
そしてトロワグロから大きな影響を受けた料理人達がいる。
「ラ・コート・サンジャック」のジャン・ミシェル・ローラン、「ラ・コート・ドール」のベルナール・ロワゾー、「ジラルデ」のフレディー・ジラルデである。
これを見るだけでも、トロワグロが現代
フランス料理において果たした役割は、あまりにも大きい事がわかるだろう。
今は、ピエール・トロワグロの息子ミシェル・トロワグロが
オーナーシェフとなり、この輝かしい美食の館で「トロワグロ」の料理を作り続けている。
*写真中央がジャン・バチスト・トロワグロ、右がジャン・トロワグロ、左がピエール・トロワグロ。
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